日本人なら、誰もが知ってる浦島太郎(上代歌謡では、彼の名前は浦島子《うらしまこ》となっています。乙姫は亀比売《かめひめ》という名前に)。
亀比売とイチャイチャして過ごしていた浦島子だったが、やがて家が恋しくなって帰郷する。だが、見慣れた故郷の面影は、どこにもない。仕方がないので、その辺にいる人に尋ねてみる。
「水江の浦島子の家族(俺の家族)が、どこに行ったか知らないか?」
「浦島子? なに言ってるんだ。浦島子なんて、三百年も昔の人じゃないか」
ガーン!! 常世の国で、おもしろおかしく過ごしている間に、なんと三百年も過ぎていたのだ。
呆然とする浦島子。愛しい亀比売をふり切って、せっかく帰ってきたのに……
「そうだ、彼女からもらった玉手箱。これで、せめて常世の国へ戻れないかっ」
浦島子はすっかり動転して、亀比売との約束を忘れていた。藁にもすがる思いで、玉手箱を開ける。
箱からは、美しい幻想の光景があふれ出た。しかし、その幻想はしばらくすると消え、浦島子が望むようなことは何も起こらなかった。
「な、なんでっ?」
真っ青になり、そのときになってやっと、浦島子は大切なことを思い出した。
「そ……そういえば、玉手箱は開けたらいけないんだっけ」
押し寄せる絶望感。
「俺のバカーっ。亀比売は、約束にうるさいのに! ああああっ……」
常世の国というのは、いくつか意味がありますが、ここでは不老不死の世界のことです。
水江について。実際のところ、どういう意味があるのか不明。枕詞のように「浦」にかけた言葉だと考えられるそうです(古事記・上代歌謡[日本古典文学全集1]より)。
つまり、あまり大した意味はないようです。
浦島太郎──いや、ここでは浦島子か──にも、歌があったのですね。ビックリ。
前回までのあらすじはコチラ
思わず玉手箱を開けてしまった浦島子《うらしまこ》(または浦島太郎)。
途方に暮れていると、亀比売《かめひめ》から歌が送られてくる。……一体、どこから見ていたんだろう。彼女、常世の国にいるんでしょ?
……もしかしたら、玉手箱には装置がくっついてて、蓋が開けられたら信号を発するようになっていたのかも。亀比売は、その信号を受け取って、「開けちゃったのね」とか思いつつ歌を送ったのでは!
晴れ渡る空に向かい、パカッと口を開けた玉手箱。浦島子は、それを相手に土下座するような姿勢をとった。
「おお、マイハニー、許しておくれ。うっかりしていただけなんだっ」
しかし、常世の国のスゥィート・ホームでは。
ピコココン。
「姫様、地上から信号が。浦島殿は、玉手箱を開けてしまわれたようです」
「何ですって。それは、彼はもう此処へ戻ってくる気はないってことっ?」
慌てる亀比売に、侍女の一言が追い打ちをかける。
「やっぱり故郷で食べるご飯が一番ですからねぇ」
「ああ、なんて事! おふくろの味に負けたわ……」
潔く身を退きます、とハンケチーフを噛みつつも、亀比売はあきらめきれずに歌を送る。
……失礼しました。いつもにも増して、壊れた解説でございました。
前回までのあらすじは、上の二首を参照。
亀比売が常世の国から送った歌が、浦島子のもとへ届いた。
「玉手箱は、うっかりして開けちまっただけなんだよ! 巻き戻ししてくれ、巻き戻しっ」
そんなの無理です。
「どちくしょ〜っっ」
「朝戸」とは何だろう。朝、起きたら開ける戸のことらしいが……
朝起きて、戸を開けた。ということは、浦島子は玉手箱を開けた後で、どこかで一晩過ごしたということなのかな?
う〜ん……
里人が家路を急いでいると、一人の若者を見かけた。
若者の足下はふらつき、目は泳いでいる。いかにも危ない。
心配になった里人は、思わず声をかけた。
「アンタ、何やってんの?」
「ううっ。俺の家族はいないし、亀比売に会えなくなるし……もう生きていたって生きていたって」
「じ、事情はよくわからんが……とりあえず、今晩はウチに泊まっていくといいよ」
こうして保護された浦島子。
翌日、朝の光にいざなわれて目覚める。戸を開けると、ふわりと風が吹き込んできた。
最初の衝撃も抜け、さすがに落ち着いてきている。今は、亀比売のことを思い、寂しさが募るばかりだった。
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