つややかな黒髪を風になびかせ、秋元聖は颯爽と歩いていく。冷たく感じられるほど冴えた美貌。
同じく登校中の生徒たちは近寄りがたいとでも言うように彼女からすこし離れて歩いている。好意、嫉妬、畏怖……さまざまな視線が彼女にそそがれるが、聖はまったく気にせずしなやかな動きで歩を進める。
昇降口に入って靴箱を開けると、中には手紙やらプレゼントやらがギッシリと詰め込まれていた。
(毎朝毎朝、迷惑な)聖は眉間をわずかにひそめ、邪険な手つきでそれらを靴箱から払いのける。学校の靴箱と言えど、勝手に荒らされるのは気に入らない。
「あー、そんなことしちゃダメだよぅ」元気な声で抗議したのは、聖の幼なじみの五十嵐慶子だった。感じやすそうな大きな瞳にあどけない顔だちは、高校生というより中学生だ。
慶子はしゃがんで、聖が捨てた手紙などを拾い始めた。「ひーちゃんってば冷たいんだから。読んであげるくらいしなよ?」
(うるさい……)
聖はなにも言わず、慶子が現れるまえと変わらない手つきで手紙類をバサバサと落としていく。足元の慶子は「もぉっ」と言いながらも、降りしきる手紙を拾っている。
邪魔物をすっかり退かすと、やっと上履きが姿を見せた。外面上なんら異常が見られないが、安心してはいけない。聖が上履きを逆さにすると、
ザザーッ。
画鋲が朝日を反射してキラキラと光りながら落ちてきた。その数、左右の靴合わせて四十個ほど。
「きゃっ!」
「ああ、慶子、そこにいたんだったな」聖は白々しく言って、床に座っている慶子を見下ろした。きれいに切りそろえたおかっぱ頭に、金色の画鋲が点々と乗っている。
「ひっどぉーい、わざとやったでしょ。服の中に入っちゃったじゃないかぁ」慶子は口をとがらせて、灰色地のセーラー服についた画鋲を手で払い落とした。胸元で結ばれた若草色のスカーフを裏返し、スカーフの間に画鋲が挟まっていないか点検する。
気づいていないのか頭上の画鋲はそのままである。聖は手をのばした。
「あ……っ」
それらを払ってやると、聖は一言、「片づけといて」
「えっ、あ、待ってよぉ」
上履きに手早く履きかえ、画鋲に囲まれて身動きできないでいる慶子を残して去っていった。
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